一般社団法人 都市と住宅政策研究所は、
 「幅広い分野で将来に希望が持てる社会の実現」を目指します。
           復興まちづくり実務セミナー開催報告
■主催:一般社団法人都市と住宅政策研究所 後援:国土交通省
■開催日時:平成24年2月23日(木)12:50~17:00
■会  場:株式会社ぎょうせい セミナールーム

<第一部>
1. 東北大学 姥浦道生 准教授「自治体復興計画策定などへの取組みと課題」
 今後のまちづくりにおける津波防災対策と土地利用計画・規制について、各被災自治体の復興計画ゾーニングを示しつつ、リスクマネジメントの視点から幾つか課題が示された。
・安全性はまちづくりの要素の一つであるが、他の問題と連動させて考えるべきであること
・安全性の確保については柔軟で多様な対応策が考えられること
・合意形成には困難が伴うこと(住民意見の変化、長期的観点の必要性と住民の安全思考)
 そのうえで、集落の衰退を避けるためにも高台移転・現地再建にこだわらず、第三の道として既存集落内空地や空き家の優先的な活用が必要との提案があった。

2. 弁護士 佐藤康之「被災地における法律問題と制度上の課題」
 都市、住宅に関する被災地における法律問題について、「復興まちづくり実践ハンドブック」を引用して説明がなされ、被災地における法律問題に対しての弁護士会等の取り組みの紹介がなされた上で、以下の各論点に関する解説が加えられた。
・二重ローン問題(二重ローンの定義、政府の二重ローン対策、各種私的整理の実情)
・原発賠償問題(原発賠償請求手続の解説、原発賠償実務の現状)
・再生可能エネルギーに関する問題(再生可能エネルギーの推進が必要とされる背景、地方における再生可能エネルギーの可能性、今後予測される展開)

3. 東京大学 大方潤一郎 教授「被災地支援をふまえての復興まちづくりのあり方について」
 大槌町で仮設住宅団地の住環境改善とコミュニティ・マネジメント支援を行ってきた経験から復興計画・復興事業の進め方について以下のような論点が提起された。
・高齢者の住宅再建の誘導のあり方(戻り再建、高齢者向け住宅、公営住宅等)
・住宅再建のコスト/補助・支援の問題(地価評価、建設費補助、ローン限度額、公営住宅払下げ)
・復興公営住宅の建設・運用の問題(コミュニティ、既存住宅との関係、多様な世帯類型の混在)
・中心市街地の再建・移転のあり方(小規模低密の状況下でのコミュニティ施設確保)
・危険区域の土地の利用法(広域沿岸遊歩道的公園の出現、災害危険区域条例の組み立て)
・新たな計画体制の構築の必要性・有効性(都市農村一体型空間計画、協働的コミュニティ再生戦略)
・住民ベースの復興まちづくり計画策定(マンパワー・マネージャー的人材不足)

<第二部>
国土交通省都市局総務課長 佐々木晶二氏「復興まちづくり施策の説明」
 法的枠組みについては、東日本大震災復興特別区域法が規制緩和(復興推進計画)、土地利用調整(復興整備計画)、復興交付金(復興交付金事業計画)を網羅した総合的なものである点、津波防災地域づくり法は目的に予防・復興両方を含み対象も本被災地に限らない点が挙げられた。
 資金的支援については以下のポイントが示された。
・復興交付金運用に際し、効果促進事業について知恵を絞ることが必要(区画整理+仮設店舗等)
・防災集団移転促進事業・都市再生区画整理事業・津波復興拠点整備事業は、実質国の全額負担で補助対象も幅広いが、事業内容等が過大にならないよう留意し、併用も含め工夫して活用してほしい
・都市公園事業についても実質全額国負担だが維持管理費は単独費なので長期的で慎重な判断が必要である
・その他市街地液状化対策事業、造成宅地滑動崩落緊急対策事業も用意している
・人的支援については、復興まちづくり人材バンク、地域づくり支援事業(専門家派遣事業)、公益法人の助成制度等を活用してほしい

<質疑応答>
 後半の質疑では、大方教授の提起した論点に対して、土地を公が持ち施設を民が整備運用するなど上物の「使い方」を踏まえた事業の構築、復興計画策定の際の地元組織の役割拡大など、制度や支援の在り方について議論がなされた。また、他にも防災シミュレーションの精確性、子ども達への支援や小学校の在り方の見直し、人材バンクの利用と費用負担等踏み込んだ議論も行われた。

<アンケート結果(主なもの)>
・実際に被災された自治体だけでなく、今後、大規模地震の発生が近い将来予想される本県にとっても有意義であった(地方自治体)。
・質疑応答が特に参考になった(建設業)。
・大変重要な内容だった(コンサルタント会社)。
・本音の発言で、良いセミナーだった。今後とも情報発信をお願いしたい(建設コンサルタント会社)
・講演者の資料が参考になった(都市開発会社)。